サプライズピッツァ

 僕は超がつくほどに物忘れがひどい。しかし、超が2個付くほどに心配症なのでかろうじて忘れ物をせずに済んでいる。

 忘れっぽいことは日常に支障をきたし、良いことは何もないように一見思えるが、実は1つだけ良いことがある。それが「サプライズピッツァ」である。

 これを読んでいる人の中にはサプライズピッツァが何かわからない無学な人もいるかもしれないので、ここで説明しておく。

 

 

 僕は唐突に宅配ピザを食べたくなることがある。食欲には嘘をつけないので、すぐに宅配ピザの注文サイトを開くのだが、宅配ピザは面白いことに1枚買うより2枚買った方がお得なのである。

 しかし、これまた面白いことに、小食な成人男性にとってピザ2枚は多すぎるのである。せいぜい食べれて1枚半だ。

 ありがたいことに人類は冷蔵庫なるものを発明しているので、余った分は冷蔵庫で保存し、心地よい満腹感に包まれながら眠りにつくことができる。

 翌朝、忘れっぽい僕の脳内からは完全にピザの存在が消え去っている。存在どころか概念までも忘却の彼方に行ってしまっている。

 何か飲み物を飲もうと思い冷蔵庫を開けると、そこには「PIZZA」の文字が。

「ピ......ザ......?」

 おもむろに冷蔵庫から取り出し、箱を開けてみると、そこにはなにやら怪しげな食べ物がある。トマトソースとチーズのかほり。

 謎の食べ物を口に運んだ瞬間、そこにはイタリア・ミラノの風景が広がる。

「これがピザ、いや、ピッツァというものか」

 人類とピッツァの邂逅の瞬間だ。

 

 

 以上がサプライズピッツァの全貌である。ちなみに「サプライズケンタ」というのもある。ピッツァがケンタッキーになっただけだ。