ぼくのバンコク2人旅③

 小学生の頃、入っていた野球クラブの監督に言われたことが未だに頭に残っている。

「お前はゲイにモテる顔をしている」

 今思えば、小学6年生の僕にそんなことを言う大人はどうかしているが、当時はよくわかっていなかった。

 

 そんな僕がバンコク旅行の計画を友人と立てるときに真っ先に予約したツアーがある。それはニューハーフショー(カリプソバンコク)だ。

 ニューハーフショーは文字通りニューハーフの方々がショーをしてくれる。日本のニューハーフバーにも行ったことないのに、本場のタイでニューハーフデビューをした。

 

 送迎付きのツアーだったので、ホテルまでコーディネーターとドライバーが迎えに来てくれた。ニューハーフショーに行くだけあって、さぞ陽気な人が来るのだと思っていたが、実際は無口なおじさんがやってきた。名前は「グリ」だか「グラ」だか言ってた気がする。

 会場に着くとショーまで少し時間があり、それまでマーケットで買い物をしてこい、とのことだった。集合時間と場所を確認し、グリとわかれた。

 マーケットはかなり広く、服やアクセサリーなど、様々なものが売っていた。調子に乗って英語で話しまくっていたら、売り子の兄ちゃんと仲良くなり、とあるものに誘われたのはここでは自重しておく。

 予想通り迷子になり、時間ぎりぎりで集合場所に着いた。グリは遅れてきた。

 ニューハーフショーの前に食事をしながらタイの古典舞踊を観たのだが、これに関してはタイ語がわからなくて記憶にない。唯一ある記憶はグリが遠くの席でつまんなそうにシンハービールを飲んでいる姿だけだ。グリはもう何十回も観て覚えてしまっているらしい。踊ってみてくれと頼んだが拒否された。

 いよいよニューハーフショーの時間が来た。半円状に席が並んでおり、僕らは前から3列目くらいの席に案内された。ドリンクのオーダーを聞かれ、僕はジントニックかなんかを頼んだ。

 開演まで待っている間、僕はものすごく感慨深い気持ちになった。一緒に行った友人は前述した野球クラブのチームメイトであり、お互いの小さい頃を知った仲だ。そんな人と一緒に二人きりで海外に行き、お酒を飲みながらニューハーフが踊り狂う様をこれから観るのだ。

 ショーの内容はどこまで書いて良いのかわからないが、予想以上に楽しかった。ニューハーフの方も綺麗な方が多かった。タイ語だったらどうしようかと思ったが、ショーは全編英語で進んでいった。

 ショーは終わり、会場から出るのだが、その途中にニューハーフの方々が立っており、チップを渡して記念写真を撮れるようになっていた。お気に入りの子に写真を頼みに行くのだ。

 僕は一番人気の子と撮ってもらおうと思い、その列に並んだ。写真のポーズは指定されているのか、ピースと指ハートの一枚ずつだった。

 写真が嫌いな僕はもちろん指ハートなんてやったことがなかったし、今後一生やることはないだろうと思っていた。まさかこんなところで指ハートをやることになるとは。

 指ハート童貞はタイのニューハーフに捧げた。あっけないもんだった。

 その後はグリと合流し、ホテルへ戻った。最後にいくらかチップを渡したが、あんまり喜んでなかった。カステラでもあげたほうがよかったか。

 

 このブログを書こうとニューハーフの方と撮った写真を見返したのだが、自分の指ハートの下手さに引いた。これじゃあお金をせびってるみたいだ。グリからチップを返してもらおう。


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