脚本

ちょっとした機会があり、とある劇団の脚本を書くことになった。といっても、商業的なものではないし、友人に頼まれたわけだから金銭も発生していない。

僕は脚本はもちろん、そういった類の創作の経験は皆無だった。脚本を書くにあたり、まずは『脚本 書き方』と調べるくらいだった。脚本の書式すら知らなかった。

そんな僕でも、何日かウンウン唸っていれば脚本らしきものが出来上がっていた。

収録の前に稽古があったのだが、こういった御時世のため、オンラインで行われた。

演者の方とは友人一人を除いた全員と初対面であり、かなり緊張した。ましてや、向こうは然るべき機関で演技について学んでいるのだ。僕みたいな付け焼き刃野郎にはもったいなかった。僕なんてただの道楽者だぞ。

とはいえ僕も大人なので、稽古自体はなんてことなく進行した。

途中で脚本家(笑)の意見を求められたりしたけど、なんとか答えた。

一回目の稽古を終えた感想は一言、「ありがてえ」だった。僕が部屋でシコシコ書いた駄文の羅列を、真剣に演じてくれていることに、経験したことの無い種類の感謝を覚えた。

演技が上手なのはもちろん、僕も考えていないようなところまで意見を出してくれたのが嬉しかった。

この喜びを誰かに共有したくなり、僕の数少ない友人であり、大学の演劇サークルで部長を務めている奴に電話をかけた。無視された。

そして数週間後、収録が行われた。もちろん僕も参加させていただいた。

といっても、当日僕がすることなんてなく、ただただ機械のように録音開始を押すだけだった。

実際に目の前で演技を見ると、やっぱりオンラインのものとは段違いだった。

さっきも書いたけど、僕が書いた箸にも棒にもかからない文字列を、しっかりと形にしてもらえたということが嬉しかった。未だかつて身に覚えのない達成感というか、快感というか、そういったものを感じた。これはハマっちまう人もいるわな。

 

完成品はそのうち何処かで公開されると思いますので、見つけた際にはよろしくどうぞ。もし万が一、億が一にも僕が書いていることに気づいた際には、決してこのブログのことは他言せぬようお願いします。