日本語力の低下について

 これは決して定量的な根拠はなく、僕自身の肌感覚としての話ではあるが、ここ最近の日本人の日本語力低下が著しい。この原因は明らかに、良質な日本語へ触れる機会の損失によるものだと考えられる。

 まず、何故にそのような機会が必要なのか。僕らは英語などの母語以外の言語を学ぶ際、文法書や単語帳などの教材を読む。それらを繰り返し読むことで、自分の中に落とし込んでいく。では、日本語ではどうか。これもやはり同じで、教材にあたる良質な日本語を読んだり、聞いたりする必要がある。

 良質な日本語とは何も純文学や、一般的に良書と呼ばれるような書物のみではなく、映画や漫画、アニメ、音楽にも散見されるだろう。しかし、圧倒的にその純度が高いのはやはり、出版された書籍だと言える。僕自身は日本語力が高い、と胸を張って言えるほどではないが、良質な日本語へ触れる機会は多いと言える。

 次に、日本語力が低下することによる悪影響について。人間は言語化することで認知する生き物と言える。これは逆説的に言語化できなければ認知できないということを指す。また、使う言語が使用者の思想・価値観に影響与えることを示した先行研究も枚挙に暇がない。つまり、日本語力が低下することはこれすなわち人間力の低下とも言える。

 最後に、僕は日本語力の低下が問題であるとは考えているが、これを改善する必要があるとは考えていない。日々レベルの低い、質の悪い日本語に触れ、その日本語力を低下させ続けてください。それらしい言葉をそれらしく並べただけの動画に「語彙力がすごくて草」とかいうクソみたいなコメントでも打ち込んでおいてください。空っぽな頭で理解できる日本語の頂点はその程度なのでしょう。貴方達は自分たちが日本語力低下の一途を辿っていることに気づかないでしょうね。そうやって僕の日本語力を相対的に押し上げる手助けをしてください。