顔合わせ
約一年ほど前、姉が結婚するとのことで、両家族の顔合わせがあった。
まず、僕は姉の旦那さんと会ったこともなければ、顔も知らなかったが、妹や母は仲が良いみたいだった。これは僕が旦那さんを嫌っている訳ではなくて、単純にタイミングが合わず、僕以外の家族だけでご飯を食べに行ったりしていたからだ。
顔合わせは地元・北海道で行われるため、大学の学祭休みを利用して帰省した。
顔合わせ前日の夜に地元に到着し、夜ご飯を食べに行くことになった。旦那さんも含めて。
端的に言うと、姉の旦那さんはすごくいい人だった。こんな姉が、よくこんないい人を捕まえてきたな、と思った。
僕や妹にも気遣ってくれていたのを感じた。
翌日、顔合わせの為ホテルのレストラン(?)に行った。めちゃくちゃいいところで、こんなことがなければ、僕みたいなもんには縁のないようなところだった。
まず乾杯をして、ご飯を食べながら談笑をする流れだった。乾杯の挨拶を旦那さんが行い、乾杯したのだが、明らかに彼の手が震えているのがわかった。
そりゃ緊張するだろうなぁ、と思っていたら、自分の手も震えていた。関係ないのに。
ご飯を食べていく中で、エビが出てきた。妹はエビアレルギーなので、旦那さんが代わりに食べてくれることになった。
二人は対面に座っていたので、彼が手を伸ばす形で皿から皿へエビを移す。そのとき、あまりの手の震えから、エビをテーブルに落としてしまった。すると彼は「やっぱり、北海道のエビは生きがいいですね」といった。なんとも言えない空気だった。
僕はそれを見て「この人、めちゃくちゃ良い人だな」と改めて確信した。ちょっと泣きそうになった。
手が震えるほど緊張しているのは、それだけ結婚に対して真摯に向き合っている証拠だし、その場はウケていなかったけど、僕は好きなユーモアだった。
無事顔合わせを終え、一人暮らしをする東京への帰路についた。
大して関係のない僕ですら緊張したのに、彼はもっと緊張しただろう。そして、僕の番が来たとき、彼以上に緊張してしまうだろう。
その時のため、今のうちに小粋なエビジョークを考えておこう。