今思えば何だったんだアレ? 【小学生編】

 20余年も生きていると、今までの人生を思い返したときに「何だったんだアレ?」と思うようなことが何個かある。

 忘れてしまうのも勿体ないので、ここに記録しておく。

 

 僕が小学生のとき、『アメーバピグ』というPCゲームが流行った。同世代の人なら非常に懐かしいだろう。

 2頭身のキャラクターを操作し、釣りや大富豪などのゲームができる。

 当時流行ってたとはいえ、まだまだPCが今ほど普及する前だったので、身近にやっている人は少なかった。その数少ないピグ友達の一人にKがいた。

 僕が始めたときにはすでにKはピグをやりこんでおり、レアなアイテムもたくさん持っていた。僕は彼にピグ内のいろいろなことを教えてもらっていた。

 ピグは一般的なオンラインゲームと同じように「フレンド」という機能が備わっていた。フレンド申請というのを他のユーザーに送ることでメッセージを送ることができるようになるなど、様々な機能があった。

 その友人はもちろん多くのフレンドがおり、その中には当時国民的人気アイドルグループのセンターMもいた。厳密に言うと、Mのプライベート用アカウントということらしい。

 Mはもちろん他のユーザーから大人気で、フレンド申請も殺到していたらしく、抽選で選ばれた10人しか申請を承認してもらえなかったそうなのだが、Kは運良くその中に入ったらしい。

 さらにMの人気はすさまじく、Mのファンクラブもゲーム内に存在した。ピグには「部活」という機能があり、種々の部活があった。その部活という機能を利用して作られたものだ。

 僕はアイドルに疎く、Mのことも当時はよく知らなかったのだが、Kに誘われて入部する運びとなった。

 

 そんなこんなで平和なピグライフを送っていたのだが、ある日事件が起きた。

 例のMのアカウントが偽物なのではないか、という疑惑が浮かんだのだ。部内は騒然とし、緊急部会が開かれることになった。

 部活にはもちろん部室というものがあり、そこで部会は開かれた。

 僕は馬鹿正直に約束の時間に部室に行き、部会に参加した。議題は「Mは偽物なのかどうか」だ。

 部室内は張り詰めており、誰一人口を開く人はいなかった。そこで、当時の僕は謎の正義感に駆られ、部会の進行をし出したのだ。剰え「Mは本物だ」と主張してしまってもいた。

 しかし、議論は発展せず、とりあえずお開きと言うことになり、部員は散り散りに帰っていった。

 僕はなんとなくその後も部室に残っていると、女の子2人組が僕のところにやってきた。僕はさっきの司会進行を褒めてくれるのだと思い、彼女らに話しかけた。すると、2人組は筆舌に尽くしがたいほど罵倒してきた。主旨としては「新参が出しゃばってんじゃねえ。正義感が気持ち悪いんじゃ」とのことだった。

 僕のキーボードを叩く手は完全に固まった。PTSDにならなかったのが何より幸いだ。

 その日以来僕はアメーバピグを辞めた。

 

 後日談として、結局そのMは偽アカウントであり、本物のMのブログで注意されていた。

 今思えば偽物であることは自明だったが、ケツの青い僕はすっかり騙されてしまっていた。これがあるからデマに引っかかる人を僕は笑えない。