じゃがりこ

小学生のときにルスツリゾートへ家族旅行に行った。

当時じゃがりこが大好きだった僕のために、母親は大量のじゃがりこを買ってくれた。3泊か4泊かしたのだけれど、旅行中ずっとじゃがりこを食べていた。

すると不思議とじゃがりこを美味しく感じなくなった。こんまり風に言うと、ときめかなくなった。あんなに好きだったのに、たかが3日程度で飽きてしまった。

僕は自分が怖くなった。常に何か渇望し、たとえ満たされたとてそれでは飽き足らず、また何かを渇望する。この強欲さに恐怖し、恥ずかしくなった。

するとどこからか声がした。

「それでいいんだよ」

声のする方を見ると、そこにはじゃがりこがあった。じゃがりこがこちらへ話しかけてきていた。

「それでいいって、なんで?」僕は聞く。

「人間は本来そういう生物なんだ。だから決して恥ずべきことではない」

「だけど、渇望によって苦しみは生み出されているんじゃ……」

「それは少し違う。苦しみは渇望からではなく、渇望への抵抗から生まれるんだ。だからこそ、渇望に抵抗する必要はないんだ。本能の赴くままに行動していいんだよ」

 

その日以来、僕は深夜でもカップ麺を食べるし、コンビニに行けば食べたいものをありったけ買うようになった。

僕が大学に入ってから太ったのは全部じゃがりこのせいだ。なんて罪なお菓子だこと。

 

 

noteも書いてます

note.com