自作カードゲーム
あらゆる遊びを禁じられた小学生時代だったが、そんなときにも法の目をかいくぐった遊びが開発された。それが、自作のカードゲームだった。
ルールは遊○王そのものだったが、本物の遊○王カードの代わりに、それぞれが自分で考えたオリジナルのカードを用いた。本物のカードは持ち込みが禁じられていたが、自作のカードであれば税関で止められることもない。
カード大にコピー用紙を切り、思い思いに絵を描き、攻撃力や効果を書き込んだ。
パッチのようにコストがかからず、バトエンのように運要素もある。まさにゲームの完成形だった。
自作だと、とんでもなく強いカードばかりが量産されてしまうのでは、という心配もあるが、そんなものは杞憂だった。それぞれが暗黙の了解でカードを作成し、不思議と秩序は保たれていた。
さらに、このゲームでは賭けが行われなかった。なぜなら、欲しいカードがあれば作ってしまえばよかったからだ。
今までで一番クリーンなゲームの誕生だった。
しかし、これもまたすぐに廃れてしまった。
理由は単純。僕らはもうこんなものでは満足できなくなってしまっていた。
もう小学校も高学年になっていた僕たちは、せっせこせっせこ一枚ずつ絵を描き、字を書きしている余裕はなかった。
遊○王もどきをやるくらいならモノホンの遊○王をやるし、カードゲームはトランプで十分だった。
僕らは気付かぬうちに大人になっていたのだった。春の夜の夢をみていただけのようだった。