椅子を買うため彼女をつくる
家で使用しているデスクチェアにガタが来てしまった。
ある日椅子に座っていると「バキッ」という異音とともに、出自不明のプラスチック片が床に落ちた。最初は何の音なのかわからなかったが、椅子の座り心地が著しく低下した為、すぐに事を把握した。
元々僕の椅子はリクライニングできる椅子なのだが、その日以来、横方向にもリクライニングできるようになってしまった。もはやリクライニングと呼んでいいのかもわからない。
かれこれ四年以上は座っている椅子なので寿命が来てしまったのだろう。
椅子を購入しなければいけなくなってしまったが、一つ問題がある。男ってのは家具屋に一人で入ってはいけない。
以前、新宿によしもとのお笑いライブを一人で見に行った際、空き時間があったのでニトリに入った。
僕は家具を見るのが好きなので、一人で3人がけのソファに座ってみたり、ダブルサイズのベッドに寝てみたり、ニトリを堪能していた。
一通り楽しんだあと、ふと周りを見渡すと、周りにはカップルや家族連れしかいなかった。男性一人で来ている人は一人もいない。女性客ですらチラホラ。
僕は目に見えない圧迫感を感じ、店を後にした。
その後に観た漫才はいつにも増して面白かった。
てな訳で、男は一人で家具屋に行ってはいけない。家具屋ってのは進学や結婚など、新生活への期待に満ち満ちた空間なのだ。そんなところに男一人で行ったって、鬱屈とした気持で満ち満ちるだけだ。
椅子を買うためには早急に彼女をつくらなければいけない。家に引き篭もって韓流ドラマを観て涙を流している暇はないのだ。何回目かもわからないくらい観たパルプフィクションのハンバーガーを食べるシーンを観て、栄養満点なチーズバーガーをスプライトで胃に流し込んでいる暇はないのだ。
可及的速やかに立川のIKEAに一緒に行ってくれる彼女を探さなければならない。
IKEAに行ったらパルプフィクション観ながらバーガーの代わりにホットドッグを食べたい。いつまでもそこに居座ってしまうかもしれない。