ぼくのバンコク2人旅②

    昨年の夏にタイに旅行に行った際、タイ古式マッサージを受けに行くことにした。

    どこがいいのかわからなかったので、フロントのナオヤにおすすめのマッサージ屋を聞いたところ、すごいニヤニヤした顔でコチラを見てくる。慌てて僕は「Traditional!!!」と弁明したが、依然ニヤニヤしたままだった。

    結局有用な情報は得られなかったので、ネットで調べたところ、プロンポンというところに有名なタイ古式マッサージ屋があるようだった。

    早速フロントのナオヤにプロンポン行きのタクシーを呼んでもらうように頼んだのだが、そのときもナオヤは心なしかニヤニヤしていた。

    これはあとから知ったことなのだが、プロンポンはバンコク有数の風俗街らしい。

 

    マッサージ屋はかなり有名な店らしく、日本の有名人のサインがところ狭しと飾ってあった。ありすぎて誰のサインがあったか忘れてしまったけど、銀シャリの鰻のサインがあったことだけは何故か鮮明に覚えている。

    マッサージはいくつかコースがあるのだが、僕は足つぼと全身マッサージ90分コースを選んだ。

    先に足つぼをやってもらい、その後2階の個室で全身マッサージをしてもらう。

    僕は普段寝てばかりいる人間なので、大して身体は凝っていない。だからなのか、マッサージがものすごく痛かった。

    「これが本場のマッサージなのか」なんて感心していると、仰向けの体制になるように指示された。

    仰向けになり、太もも周りのマッサージをしてもらっていると、マッサージ師のおばさんが股間のあたりで手を止めた。

    僕はそもそも日本でもこういうお店に来たことが無かったので、マッサージとはそういうものだと思っていたが、さすがに止まっている時間が長い。

    不審に思いおばさんの方を見ると、おばさんが優しい声で「Relax.....」と囁いてきた。

 

    タイに来る前に、タイのマッサージ屋はどこに行ってもエロいことに誘ってくる、という事前情報を得ていた僕はパニックになった。

    にわかには信じ難い噂だったが、まさか本当だったとは。

    僕は慌てて「No! No! No!」と必死に断り、普通のマッサージをしてもらうように促した。おばさんの悲しそうな顔が脳裏に焼き付いている。

 

    とりあえず事なきを得ることができ、タクシーでホテルまで帰った。フロントにはもうナオヤがいなくなっており、別の人になっていた。

    おそらくナオヤもプロンポンの街に消えたのだろう。